たるたる日和
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[読書]コインロッカー・ベイビーズ
この小説が1980年に刊行されてから、村上氏はこの小説を越えるエネルギーとボリュームを併せ持った作品を書いていません。それもそのはず、この小説はそれだけ爆発的な形容しがたい作品なのです。こんな小説ばかり発表していたら気が狂ってしまうだろうし、凡庸な二番煎じにしかなりえないことを、作者は理解しているのでしょう。

この小説は、伏線を張り巡らせてあったり、壮大なスケール感があったり、緻密な仕掛けがほどこされているわけではありません。なんていったらいいのかな・・フラッシュのように強烈に発光しては消えていくイメージと、行き場のないというより意思を持たない暴走するエネルギーの集合体。そうとしか言えない・・。

村上氏の作品はリアルだと評されることが多いけど、それは場面の映像描写だけで半ページは余裕で埋め尽くす恐るべき緻密さと、膨大な知識量だけではなく体験者のみにしか分かり得ぬ生々しさが、「リアル」という言葉を支えているんだと思います。


・・・・・・・


この作品には、過去はない。未来もない。ただ淡々と現在を描いていく。おそらくは意図的に、ページをびっしりと文字で埋め尽くしているため、かなり読みづらい印象をうけます。最初の100ページまではホントきつい。でも、それを過ぎると本の中に胸倉をつかまれて引きずり込まれるようなパワーがあります。

表題のとおり、この小説は、キクとハシというコインロッカーに捨てられた子供を中心に話が進んでいきます。この「コインロッカーに捨てられた」という事実は話のいたるところで出てきますが、可哀想とか不幸な出自を強調するためではなく、とある目標として機能しているように思えました。あまり書くとネタバレになってしまうけど・・。

ちょっぴり中身の話をすると、下巻の冒頭に裁判のシーンを持ってきたのは、完全に狙ってやったことだと感じましたね。現代社会や常識人とよばれている人たちの文脈では、キクとハシの行動を説明できないばかりでなく、理解もできないということを良く伝えています。

また、2人で表裏のように育っていったキクとハシが、行動を共にすることがなくなり、バラバラになってから、2人がどう変わっていくのか(特にハシ)、このあたりも見所です。情景描写をぐちゃぐちゃに描写していくことで、まるで地面をのた打ち回っているかのような、頭がぐるんぐるんする仕掛けも満載です。


・・・・・・・


東京という大都市が廃墟になって、そこに生きる人をかく作品はたくさんありますよね。でも、この作品では「薬島」という舞台設定を行うところに妙があります。「薬島」の中は狂気が支配するスラムよりもひどい場所なのですが、他の部分の東京はフツウの街なんですよ。

フツウの中に紛れ込んだ、隔離された、そして容認された狂気。その狂気が向かう先は・・。ラストシーンは静かである意味綺麗でした。読んだ後、何かが残る小説ではありません。ただ、圧倒的なパワーの前にぼーっとしてしまうだけ。そんな読後感も狙いのうちなんでしょうね。

万人向けではないけれど、稀有な魅力を持つ作品だと思います。村上氏の作品を読み始めるなら別の作品を推しますが・・こんな作品はもう出てこないよ。
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by lars.ff11 | 2006-11-26 00:38 | 音楽&ゲーム