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たるたる日和
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[映画]博士の愛した数式
イノセント(無邪気さ)を扱う映画は多いです。

知的障害者が見せる打算のない無邪気さは、一面ではやりきれなさやきまりの悪さを感じさせるけど、すがすがしい清らかさも同時に受けますよね。その美しさを描く作品は映画に限らず、小説やテレビドラマ(聖者の行進とか)でよく扱われる、言ってしまえば陳腐なテーマです。そんな中で独自性を主張するのは至難の技。





この映画では「80分しか記憶が持たない」数学者が主人公です。交通事故により脳に障害を負った次の日から記憶が飛ぶわけですから、博士の中では永遠に交通事故のあった日が「昨日」なのです。毎日通う家政婦さんも毎日が「初対面」。しかし、それ以外はいたって普通。そんな不思議な設定がうまくいかされています。

この映画を一言で言ってしまえば「淡々とした穏やかなやさしさ」でしょうか。窓際でやわらかな日差しの中で博士がぼんやりと考え事をしているシーンが良く出てきますが、あれは象徴的なシーンだと思います。登場人物たちも、自然でいながら、信じられないほとやさしい人ばかり。淡々と淡々と物語は進んでいきます。

ただ、「やさしい」だけでは気の抜けたコーラのような作品になってしまうわけで、ちょっとしたところで頭をもたげる、障害者への偏見や、元恋人に対する嫉妬などでアクセントがつけられています。ただ、それはほんとに「頭をもたげる」だけなのです。そういう感情を自覚したあと、登場人物たちは自分の行動を戒め、次に進む。博士も自分の障害を実はわかっていて苦悩しているのです。その苦悩を忘れてしまうことを恐れながら・・しかし、常に前向きです。ほんと、いやな感じの残らない映画ですね。

深津絵里演じる家政婦さんがとても良かった。飛びぬけて美人というわけではないのに、しぐさや表情がとても魅力的なのは彼女の良さですね。毎回記憶の飛ぶ博士と何度も「初対面」の挨拶をするわけですが、あの演技が自然にできるのは他の女優では考えられない。TVの「食わず嫌い王」に出てたときはあまり感じよくなかったので、あれは完全に女優としての演技。それが凄いです!(皮肉じゃないよ)

劇的な盛り上がりには欠けますけど、怖い映画や暗い映画が嫌いな人にはお勧めの映画だと思います。

(2006年 日本)
by lars.ff11 | 2006-07-07 22:17 | 音楽&ゲーム